年末調整の書類提出後の12月末に子どもが生まれた時の基本的な考え方とは

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

12月末に子どもが生まれた場合、年末調整後でも扶養控除や配偶者控除の修正が可能です。年末の出産は、書類提出後に家族構成が変わるため「どうすればいいのか」と迷う人が多い時期です。本記事では、年末調整済みでもできる修正方法や必要書類、確定申告の流れをわかりやすく解説します。忙しい年末でも安心して手続きを進められるよう、実践的な対応策をまとめました。

年末調整後に子どもが生まれたときの基本的な考え方

所得税法では、12月31日時点の家族構成で扶養控除を判断します。したがって、12月生まれの子どももその年の扶養に含めることができます。たとえ年末調整書類の提出をすでに終えていても、翌年の確定申告で修正すれば控除を受けられます。

会社によっては、出生後すぐに「扶養控除等申告書」を再提出することで年内に修正できるケースもあります。まずは勤務先の人事・総務担当へ相談し、再提出が可能か確認することが大切です。対応期限に間に合えば、確定申告をせずに済む場合もあります。


年末調整と確定申告の違いを理解する

年末調整は、会社が従業員の所得税を再計算し、過不足を調整する手続きです。対して確定申告は、年末調整で反映できなかった控除を個人で修正する手続きです。年末調整後に子どもが生まれた場合は、確定申告で扶養を追加申請しましょう。

以下の表で、両者の違いを整理しておきます。

項目年末調整確定申告
手続きを行う人会社本人
提出時期11月〜12月翌年2月16日〜3月15日
対象者給与所得者(会社員など)自営業者・修正申告者
扶養追加の扱い原則不可(再提出で対応可能な場合あり)可能(出生後の追加申告OK)
還付の有無原則なし控除申請により還付あり

控除対象となる条件を確認する

子どもを扶養に入れる際は、年齢や所得条件を満たしているかを確認する必要があります。以下に、主な扶養控除区分をまとめました。

区分条件控除額(目安)
一般の扶養親族16歳以上38万円
特定扶養親族19歳以上23歳未満63万円
同居老親等70歳以上で同居58万円
16歳未満の子ども所得税控除なし(住民税で考慮あり)0円

12月に生まれた子どもは、所得税上の扶養控除は対象外ですが、翌年の住民税では「非課税判定」に影響するため、家計の負担が軽くなる可能性があります。自治体ごとに反映時期が異なるため、確認しておきましょう。


配偶者控除の見直しも忘れずに

出産により妻が育児休業や退職をした場合、夫の配偶者控除や配偶者特別控除の対象になる可能性があります。配偶者の所得が48万円以下であれば配偶者控除(38万円)、48万円を超えて95万円以下なら配偶者特別控除が適用されます。

控除の種類配偶者の所得控除額(目安)備考
配偶者控除48万円以下38万円所得制限あり(本人の年収1,220万円以下)
配偶者特別控除48万円超〜95万円以下最大38万円配偶者の所得に応じて段階的に減額
対象外95万円超なし控除適用外

夫婦双方の年収バランスによって控除額が変動するため、源泉徴収票をもとに確認することが重要です。勤務先に確認しておけば、翌年の住民税にも正しく反映されます。


必要な手続きをまとめて確認する

子どもが生まれたときに必要な主な手続きをまとめました。年末は書類が多くなりますが、順序を整理して行うことで手続き漏れを防げます。

手続き内容提出先提出時期必要書類
出生届市区町村役場出生から14日以内出生証明書
健康保険加入勤務先または健康保険組合出生後すぐ扶養追加届、出生届の写し
児童手当申請市区町村役場出生から15日以内印鑑、通帳、マイナンバー
扶養控除再申告勤務先年内または翌年初扶養控除等申告書
確定申告税務署翌年2月〜3月源泉徴収票、住民票、出生証明書

児童手当や健康保険の手続きは税務とは別に必要です。特に健康保険の扶養登録を忘れると、医療費の請求ができなくなる恐れがあります。


よくある質問と注意点

年末調整が終わっていても、確定申告で修正できるので安心してください。出産後に扶養追加を忘れても、確定申告で申請すれば控除が受けられます。申告時には、出生証明書や住民票を添付することが基本です。

また、児童手当や医療費控除など、関連する制度も一緒に確認しましょう。医療費控除では出産費用が対象になります。出産にかかった費用の領収書は必ず保管しておきましょう。

医療費控除に関する要点を以下にまとめます。

項目内容ポイント
対象となる費用出産費用、入院費、通院費など出産一時金との差額分が対象
控除の計算式(年間医療費 - 保険金など補填額)- 10万円所得が200万円未満の場合は所得の5%
提出書類医療費控除明細書、領収書、源泉徴収票明細書の添付で領収書提出は原則不要

出産関連費用をしっかり整理しておくことで、確定申告時の負担が軽減されます。


まとめ

12月末の出産でも、その年の扶養対象に含められるため、焦らずに対応すれば控除を受けられます。年末調整後に出産した場合でも、確定申告で扶養や配偶者控除の修正が可能です。さらに、児童手当や医療費控除など、関連制度を一緒に確認することで、家計の負担を軽くできます。

年末は多忙ですが、勤務先や税務署に早めに相談し、必要な書類を揃えることが安心への第一歩です。正しい手続きで節税し、家族が増えた新しい一年を気持ちよく迎えましょう。

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