不動産売却にかかる税金の種類と節税方法をわかりやすく解説!相続・贈与を受けた物件の注意点も紹介

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

不動産の売却では、売却価格だけに目が行きがちですが、実際に手元に残る金額は「税金」によって大きく左右されます。譲渡所得税、住民税、復興特別所得税など、聞き慣れない税金が発生するため、知らないまま売却すると損をしてしまうことも。本記事では、売却時に知っておくべき税金の種類とその計算方法、さらに節税のための控除制度まで、実例を交えて詳しく解説します。

不動産売却にかかる税金とは

不動産の売却には、単に買い手を見つけることだけでなく、売却益に対しての税務処理が伴います。その中心となるのが譲渡所得税であり、これに住民税と復興特別所得税が加わります。譲渡所得とは、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた利益を指し、この額がプラスである場合に課税対象となります。

さらに重要なのが、所有期間による課税区分です。所有期間が5年以下なら「短期譲渡所得」として高税率、5年超なら「長期譲渡所得」として優遇されます。この違いは売却計画に直結し、手元に残る金額に大きく影響を及ぼします。下記の表で違いを整理します。

区分所有期間所得税率住民税率復興特別所得税率合計税率
短期譲渡所得5年以下30%9%約0.63%約39.63%
長期譲渡所得5年超15%5%約0.315%約20.315%

このように、所有期間が1年違うだけで、最終的な手取り額に数百万円の差が生まれる可能性もあるため、売却時期は慎重に見極めるべきです。


税金の計算方法と譲渡所得の算出

売却により発生する譲渡所得を正確に算出するためには、取得費や譲渡費用の内訳をしっかり把握する必要があります。以下がその基本式です。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

ここでの取得費とは、不動産の購入価格のほか、購入時の登記費用、仲介手数料、不動産取得税などが含まれます。一方、譲渡費用には、売却時の仲介手数料、測量費用、建物解体費用などが該当します。建物については減価償却が必要で、年数に応じて取得費が減額されます。これを考慮せずに申告してしまうと、税務署から指摘を受ける可能性があるため注意が必要です。

また、取得費が不明な場合には、概算取得費として売却価格の5%を用いることも可能ですが、これは通常の取得費よりも少ないため、課税額が増えるリスクがあります。可能な限り、当時の売買契約書や領収書などを探し、実額で申告することが望ましいです。


控除制度の活用で税負担を軽減する

税負担を軽くする方法として、国が用意している控除制度の活用は必須です。代表的な制度を下表にまとめます。

控除制度内容控除額または効果条件概要
3,000万円特別控除居住用財産の売却時に譲渡所得から控除可能最大3,000万円自己居住用/一定期間以上の居住など
居住用財産の軽減税率長期所有かつ居住用の場合、税率がさらに軽減最大10%適用所有期間10年以上/6,000万円までの部分適用
損益通算および繰越控除制度他の所得と損益通算、または損失を翌年に繰り越し最大3年間損失繰越可能居住用不動産など、一定の条件あり

特に3,000万円特別控除は、譲渡所得が仮に3,000万円以内であれば非課税になる非常に大きな制度です。住み替えをする人や、相続後の売却などで活用されるケースが多く見られます。

これらの控除は、適用条件が細かく決まっているため、条件を確認した上で、漏れなく確定申告書に記載することが必要です。


確定申告と納税スケジュール

不動産売却で利益が出た場合には、翌年に確定申告を行う義務があります。申告期間は毎年2月16日から3月15日までで、納税もこの期間内に完了させる必要があります。必要書類は次の通りです。

書類名用途
売買契約書(取得・売却)売却価格や取得費の証明
登記事項証明書登記名義人・不動産の所有証明
譲渡費用の領収書減価償却や控除の裏付け
確定申告書B様式譲渡所得の計算・申告用
控除証明書類(住民票など)特別控除適用の条件証明

電子申告を利用することで、提出の手間が省けるほか、還付がスピーディに処理されることもあります。納付が困難な場合には分割納付や延納の相談も可能ですが、これには別途申請が必要となるため、早めに行動を起こしましょう。


相続・贈与で取得した不動産の売却と税務

親から相続した不動産や、贈与を受けた不動産を売却する場合も、譲渡所得税が発生する可能性があります。このときの取得費は、原則として譲渡者の取得費を引き継ぐ「引継ぎ課税」が原則です。

つまり、親が購入した時の価格や費用が取得費となるため、古い不動産ほど資料が揃わず、概算取得費を使わざるを得ないケースが増えます。その場合、結果的に課税所得が増えてしまうため、相続時に関係書類を整備しておくことが重要です。

また、相続登記が済んでいないと、売却手続き自体が進まないため、法務局での登記変更を早めに済ませましょう。遺産分割協議書の作成、法定相続人の確認、印鑑証明の取得など、複数の手続きが発生しますので、司法書士のサポートを受けることも検討に値します。


専門家への相談は安心への近道

不動産売却に関する税務は個々の事情によって大きく異なり、必ずしも一律の対応では済まないことが多々あります。特に、以下のようなケースでは税理士への相談が有効です。

  • 控除制度の適用が複雑なケース
  • 相続や贈与を経た不動産売却
  • 過去の確定申告の内容に不備がある可能性がある
  • 不動産以外の所得と損益通算する必要がある

税理士に依頼することで、確実な節税が可能となるだけでなく、書類の不備や手続きの遅れといったリスクも最小限に抑えられます。報酬はケースによって異なりますが、売却益が大きい場合には節税額の方が上回ることも多いため、積極的に検討する価値があります。


まとめ

不動産売却時には、見落とされがちな税金が発生します。譲渡所得の正確な把握、取得費や譲渡費用の計上、そして控除制度の活用が節税の鍵です。また、所有期間や相続の有無、売却のタイミングによって課税額が大きく異なるため、計画的な対応が重要です。

控除制度を最大限に活用し、必要に応じて税理士や司法書士と連携することで、手元に残る資金を確保しつつ、トラブルの回避にもつながります。大切な資産を有効に活用するために、税務知識を深め、確実な対策を講じましょう。

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