今年の年末調整で基礎控除と給与所得控除が変更!年収400万円の人はどれくらい減税される?

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

2025年の年末調整では、基礎控除と給与所得控除の金額が同時に見直しされます。これにより、中間層の多くが減税の恩恵を受ける見込みです。年収400万円の会社員の場合、どれくらい手取りが増えるのか、実際の数字で解説します。制度改正の背景や今後の影響まで、わかりやすく整理した内容をお届けします。

基礎控除と給与所得控除とは

税金を計算する際、所得金額からまず差し引かれるのが「控除」です。その中でも、基礎控除給与所得控除はすべての給与所得者に関係する代表的な控除です。

項目内容該当者特徴
基礎控除所得の有無に関係なくすべての納税者に適用される控除全納税者生活に必要な最低限の所得を保障
給与所得控除給与所得者に対して経費を概算で控除する仕組み会社員、公務員など経費の申告が不要
課税所得総収入から各種控除を差し引いた残額全納税者ここに税率をかけて税額を計算

このように、控除が増えるほど課税される金額が減り、税金が軽くなる仕組みです。


2025年の改正で何が変わるのか

2025年の税制改正では、基礎控除と給与所得控除が次のように見直されます。

区分改正前改正後(2025年)増減
基礎控除38万円48万円+10万円
給与所得控除(年収400万円の場合)134万円130万円−4万円
実質的な控除増加+6万円(減税効果)

この結果、課税所得が6万円減ることになり、所得税と住民税の両方で減税効果が生じます。


年収400万円の人はいくら減税になるのか

年収400万円の給与所得者を想定した場合、減税額は次の通りです。

項目改正前改正後差額
給与所得控除後の所得266万円270万円+4万円
基礎控除適用後の課税所得228万円222万円−6万円
所得税(税率10%想定)約22.8万円約22.2万円約6,000円減税
住民税(税率10%想定)約22.8万円約22.2万円約6,000円減税
合計減税額約12,000円

つまり、年収400万円の場合、年間でおよそ1万円前後の減税効果が得られます。共働き世帯の場合、夫婦それぞれが恩恵を受けるため、世帯単位では約2万円前後の減税となります。


改正の目的と背景

今回の改正は、政府が掲げる「中間層支援と税負担の公平化」を目的としています。副業や兼業の増加など、働き方が多様化した現代では、従来の税制では実態に合わない部分が出てきました。そのため、給与所得控除を見直しつつ、基礎控除を増やして全納税者が平等に恩恵を受けられる形に整えたのです。

さらに、高所得者への優遇を抑える仕組みとして、所得が一定以上ある場合は基礎控除が段階的に減額されます。

合計所得金額基礎控除額控除の適用状況
2,400万円以下48万円全額適用
2,400万円超〜2,450万円以下32万円一部減額
2,450万円超〜2,500万円以下16万円さらに減額
2,500万円超0円対象外

このように、高所得者への控除縮小と中間層の減税を両立させる制度設計となっています。


控除見直しによる年収別の影響

実際にどの年収層がどれだけ恩恵を受けるのかを見てみましょう。

年収改正前の所得控除改正後の所得控除差額備考
300万円約172万円約178万円+6万円減税
400万円約172万円約178万円+6万円減税
700万円約206万円約206万円±0円変化なし
900万円約226万円約220万円−6万円増税傾向

中間層(300〜700万円台)は減税効果がある一方で、高所得者層は控除縮小により増税方向になります。


年末調整での手続きと注意点

今回の改正は自動的に反映されるため、給与所得者が個別に手続きを行う必要はありません。
ただし、医療費控除やふるさと納税など、他の控除を受ける場合は確定申告が必要になります。

電子申告(e-Tax)やマイナンバーカードを活用すれば、控除証明書の提出もオンラインで完結できます。以下のような点を意識すると、スムーズに手続きが行えます。

手続き内容対応方法注意点
年末調整書類の提出会社指定の方法に従う紙または電子可
控除証明書の取得各保険会社などの電子交付サービス紛失に注意
副業・医療費控除など確定申告が必要e-Tax利用で手続きが簡便化

電子化の流れは年々強まり、今後は紙の書類を使わない完全デジタル化も視野に入っています。


家計への影響と今後の見通し

今回の減税効果は1人あたり年間で約1万円前後と小さいものの、生活費の上昇を考慮すると家計への支援効果は確実に存在します。特に共働き世帯や扶養家族がいる家庭では、実質的な手取り増加が期待できます。

世帯構成年収減税額コメント
単身者400万円約12,000円個人でも実感できる負担軽減
共働き(夫婦)400万円×2約24,000円世帯で恩恵が倍増
扶養あり(配偶者控除あり)400万円約15,000円子育て世帯に追い風

さらに、控除額が増えることで所得税率の適用範囲がわずかに下がる場合もあり、翌年の住民税にも減税効果が波及します。


まとめ

2025年の税制改正により、基礎控除が10万円引き上げ、給与所得控除が4万円引き下げられます。
結果として、年収400万円の人は年間でおよそ1万円前後の減税効果を受けることになります。

ポイント内容
対象すべての給与所得者
改正内容基礎控除+10万円、給与所得控除−4万円
減税効果年間約1万円〜1.2万円
高所得者控除が段階的に縮小し増税方向
手続き年末調整で自動反映、追加申請不要

この改正は、中間層の税負担を和らげるとともに、所得格差の是正を目的としたものです。税金は暮らしに直結する要素です。自分の控除内容を理解し、家計を守る第一歩として税制改正を正しく把握することが重要です。

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