国民年金を前納した後に就職!重複した保険料は返ってくるの?仕組みと手続きを徹底解説

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

国民年金をまとめて支払う「前納制度」は、割引が受けられるお得な仕組みとして人気です。しかし、前納後に就職して厚生年金へ切り替わった場合、すでに納めた保険料が無駄にならないか気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、前納した国民年金がどのように取り扱われるのか還付の条件や手続き方法を分かりやすく解説します。

国民年金の前納とは

国民年金の前納制度とは、将来の保険料をまとめて支払うことで割引を受けられる仕組みです。6か月、1年、2年単位で選択でき、まとめて支払うことで1年あたり数千円の節約が可能です。

前納期間割引額(令和6年度参考)支払い方法
6か月前納約820円程度口座振替または現金
1年前納約1,630円程度口座振替または現金
2年前納約3,230円程度口座振替のみ

前納の割引は、年によって若干異なりますが、支払期間が長いほど割引率が高くなる傾向にあります。特に安定収入がある自営業者や学生に人気の方法です。


就職して厚生年金に加入したらどうなるのか

就職すると会社を通じて厚生年金に加入します。厚生年金の被保険者(第2号被保険者)になると、自分で国民年金を納める義務はなくなります
そのため、前納していた国民年金期間と厚生年金加入期間が重なると、その分は「重複」とみなされ、返金(還付)対象になります。

状況払い戻しの有無手続き
厚生年金加入後、前納期間が残っている還付される還付申請が必要
厚生年金加入前に前納期間が終了している還付されない手続き不要
前納後に任意加入を選択した還付されない継続扱い

注意点として、還付は自動では行われません。申請を行わなければ、払いすぎた分が戻ってこないため、必ず手続きを行う必要があります。


還付を受けるための手続き

還付金を受け取るには、居住地の市区町村役場または年金事務所で「国民年金保険料還付請求書」を提出します。

必要書類内容
国民年金保険料還付請求書申請書類。窓口または日本年金機構のサイトで入手可能
本人確認書類運転免許証、マイナンバーカードなど
年金手帳または基礎年金番号通知書個人の年金番号を確認するため
銀行口座情報還付金の振込先を指定
厚生年金加入を証明する書類資格取得届の写しや社会保険証など

申請後、審査を経ておおむね2〜3か月程度で指定口座に入金されます。


還付額の計算方法

還付される金額は、厚生年金に加入した月の前月までを有効として計算されます。つまり、加入月の翌月から前納期間終了までの月数分が返金対象です。

前納期間就職月還付対象月数概算還付額(1か月あたり16,520円)
4月〜翌年3月(1年前納)7月8か月分約132,160円
4月〜翌年3月(1年前納)3月0か月還付なし

この計算はあくまで目安であり、実際の還付金額は年金事務所での計算により確定します。


手続きの際の注意点

① 還付は自動ではない
就職して厚生年金に切り替わっただけでは返金されません。必ず自分で申請しなければなりません。

② 口座情報の確認が必要
前納時の口座を解約している場合は、新しい口座情報を申請書に記入します。口座の誤りがあると振込が遅れるため注意しましょう。

③ 還付期限がある
還付の申請は原則として2年以内です。期限を過ぎると還付を受け取れなくなる可能性があります。


前納のメリットとデメリット

前納制度には魅力的な利点がありますが、ライフイベントの変化により返金手続きが発生する可能性もあります。

メリットデメリット
割引で支払額が安くなる就職などで返金申請が必要
支払い忘れを防げる一括支払いによる負担が大きい
将来の老齢基礎年金につながる還付までに時間がかかる

特に就職活動中の人は、6か月前納など短期で支払う方法を選ぶと、急な就職にも対応しやすくなります。


前納と社会保険の切り替えタイミング

就職の際、厚生年金の資格取得日は入社日からとなります。社会保険の加入手続きは会社が行いますが、国民年金の脱退手続きは自分で行う必要があります。

項目手続き先必要な書類注意点
国民年金の脱退市区町村役場健康保険証、印鑑など前納している場合は還付手続きも同時に行う
厚生年金の加入勤務先(会社)資格取得届を会社が提出自動的に国民年金から切り替わる
保険料の還付年金事務所または役場還付請求書など還付金の受け取り口座を忘れずに指定

このように、就職時の年金手続きは「脱退・加入・還付」の3段階で考えるとスムーズです。


前納制度を活用する際のポイント

前納を行うときは、今後1〜2年のライフプランを意識することが大切です。以下のような場合は、長期前納より短期前納を選ぶのが賢明です。

状況おすすめの前納期間理由
就職活動中6か月前納急な就職時の返金対応がしやすい
自営業で安定収入がある2年前納割引効果が大きい
留学予定がある1年前納在外期間中の支払いを事前に済ませられる

「少しでもお得に」という意識だけでなく、将来の変化を考慮して選択することが重要です。


まとめ

国民年金を前納していた期間中に就職して厚生年金に加入した場合、重複分の保険料は還付の対象となります。ただし、自動返金ではなく申請が必要であり、還付の期限も設けられています。

前納制度は確かに割引という利点がありますが、人生の変化に柔軟に対応することが重要です。就職や転職が見込まれる場合は、短期間の前納を選択し、無理のない支払い計画を立てると安心です。

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