親への仕送りは課税対象になる?贈与税がかからないための正しい受け取り方とは

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

親子間の仕送りは「親孝行の形」として一般的ですが、税金のルールを知らないとトラブルの原因になることがあります。とくに、「毎月の仕送りが贈与とみなされてしまう」というケースも珍しくありません。
この記事では、贈与税が発生する条件や非課税にするための注意点を整理し、安心して支援を受け取るための方法を紹介します。家族の思いやりが無用な課税トラブルに発展しないために、正しい知識を身につけましょう。

仕送りに贈与税がかかるかどうかの基本

親子間の仕送りは、一般的に「生活費」や「医療費」として渡されることが多く、扶養義務者からの援助にあたる場合は贈与税の対象外となります。つまり、生活維持のための支援であれば課税されません。

ただし、使い道によっては課税対象となるケースもあります。例えば、仕送りを貯金し続けたり、投資や不動産購入に使った場合は、「生活費ではない」と判断されることがあるため注意が必要です。


贈与税がかかるケースとかからないケース

贈与税が発生するかどうかは「お金の用途」で判断されます。以下の表で違いを整理しておきましょう。

区分内容贈与税の扱い
生活費・医療費として使用食費・家賃・医療費など日常生活に必要な支出非課税
貯金・投資・保険加入など将来の資産形成や貯蓄目的で使用課税対象
不動産購入・車の購入など生活費を超える高額支出課税対象の可能性あり

仕送りの名目が「生活費援助」であっても、実際の使い方が資産形成に近い場合は課税対象になります。「目的」と「実際の支出内容」が一致しているかがポイントです。


非課税枠をうまく活用する

贈与税には年間110万円の基礎控除があります。つまり、1月から12月までに受け取った仕送りが110万円以内であれば、贈与税はかかりません。
しかし、毎月10万円を受け取っている場合、年間で120万円となるため、使い道が明確でない10万円分は課税対象となるおそれがあります。

項目内容注意点
年間基礎控除額110万円この金額を超えると課税対象
仕送り額の目安月9万円以下年間108万円で非課税範囲内
課税対象となる例生活費以外に預金していた分「生活維持」目的でないと判断される

また、複数の子どもから仕送りを受けている場合は、合算で110万円を超えると課税対象となる点にも注意が必要です。


税務署が確認するポイント

税務署は、仕送りの内容を判断する際に以下のような点を重点的に確認します。

チェック項目内容対応のポイント
通帳の動き入金後にどのように使われているか出金が定期的にあり、生活費として使っていれば安心
金額の妥当性支援額が生活費として適正か高額すぎると贈与と判断される場合がある
使用目的医療費や生活費として実際に使われているか領収書や家計簿で証明できるようにしておく

特に、通帳に残高が積み上がっている場合は「生活に使われていない」と見なされることがあるため、支出の記録を残すことが重要です。


非課税のための工夫と記録の残し方

仕送りを非課税にするためには、「生活費として使っている証拠」をしっかり残すことが大切です。
日常的に行える工夫を以下にまとめます。

工夫内容効果
支出を家計簿で記録する生活費・医療費の用途を明確化税務署に説明しやすくなる
送金時のメモを残す振込明細に「生活費援助」などの記載贈与ではなく扶養目的であることを示せる
領収書やレシートの保管日々の買い物・医療費の証明税務調査時の裏付け資料になる

また、現金で受け取るよりも銀行振込で受け取る方が証拠として有利です。通帳の履歴が残るため、税務署に説明する際の信頼性が高まります。


親子間の仕送りと相続の関係

仕送りの中で使わずに残ったお金を貯金していると、将来それが親の相続財産とみなされる場合があります。
つまり、贈与税の問題を回避しても、相続税の対象となる可能性があるのです。

状況税金の扱い注意点
仕送りをそのまま貯金していた相続時に財産として計上相続税の対象となる可能性あり
仕送りを生活費として使い切っていた財産には含まれない記録を残しておけば問題なし
貯金の一部を子どもに戻した名義預金とみなされる可能性二重課税リスクに注意

生活費として使った証拠を残しておけば、将来の相続トラブルも防ぐことができます。


よくある誤解と注意点

  1. 「家族だから税金はかからない」は誤り
    家族間でも、使途が「生活費」以外なら課税対象になることがあります。
  2. 「一度にまとめて送っても同じ」は危険
    年に1回まとめて大金を送ると、贈与と判断される可能性が高まります。定期的に、必要な額を送る方が安心です。
  3. 「現金で渡せばバレない」は大きなリスク
    税務調査で銀行口座の入出金履歴を追跡されることがあり、証拠が残らない現金受け渡しは疑われやすくなります。

まとめ

息子からの月10万円の仕送りは、生活費や医療費などに使う限り非課税です。しかし、貯金や投資に回してしまうと、贈与税の対象となる可能性があります。
非課税の範囲を維持するためには、以下の3点が重要です。

  1. 仕送りの目的を明確にしておく
  2. 使途を記録し、証拠を残す
  3. 定期的で無理のない金額に設定する

家族の思いやりである仕送りを安心して受け取るためには、税金の仕組みを正しく理解することが何より大切です。適切に管理すれば、税務署から指摘を受ける心配もありません。
「もらう側も贈る側も安心できるお金の受け渡し」を心掛け、感謝の気持ちを形にしていきましょう。

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